ヴィアマーレ

耳抜きが苦手という方のための処方箋

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耳抜きにまつわるQ&A

 

耳抜き、いわゆる圧平衡、英語で言うところの “equalization”

耳抜きが苦手というビギナーダイバーは少なくありません。

また耳抜きがうまくできなかったが故にダイビングから遠ざかっている元ダイバーさんも少なくないのではないでしょうか?

そんな方々のための福音書をお贈りしましょう(笑)

 

耳抜きのメカニズム!

 

耳抜き的な行為はダイビングではなくても誰もが経験していることです。

例えば新幹線でトンネルに入った時とか飛行機での離着陸時。かなりの圧力差が発生しますので、耳に圧迫を感じる方も多いでしょう。でもそれらの変化は平素の一気圧からせいぜい3割程度の増減ですので、水中に潜るという活動に比べればたいした変化ではありません。

飛行機の着陸前にキャビンアテンダントさんが飴玉を配りますよね?あれは耳抜きを楽にするためなのです。

これが水中に入ると飛行機の離着陸時のレベルの圧力差がたったの水深30cmで起こることになります。それだけ水による圧力は強いのです。

水深10mでは水面の二倍、水深20mでは水面の三倍の圧力が人体に作用します。

人間の体はほとんどが水分なので人体そのものには圧力による直接的な影響はありませんが、体内には少なからず空気が介在する組織が存在します。いわゆる呼吸器系、ダイビングで問題となるのは、特に中耳や副鼻腔などの体内空間です。

これらの体内空間は水中に潜って周囲の圧力が増すことによってボイルの法則に則って圧縮されるため、その圧縮された分の体積が補充されないと不具合を生じます。具体的には中耳の場合は鼓膜の内側の空気が圧縮されますので、鼓膜が内側に押されて耳の痛みとなります。肺から微量な空気を鼓膜の内側(中耳)に必要な空気を送りさえすれば、その痛みや不具合が解消されるわけです。

でもそうそう簡単にはいかないところが困ったところなのです。

 

耳抜きのテクニックのいろいろ

 

トゥインビー法(嚥下法)

 

ごくオーソドックスな方法で、いわゆる日常的な場面でみなさんが特に意識しないでやっている方法です。いわゆる唾を飲み込むとか、顎を動かすとか、口腔内を膨らますなどのアクションで耳管を開き中耳内に空気を送り込んであげるものです。自分がダイビングシーンで通常使っているのはおそらくこの方法、ですが自分にとって耳抜きは全く意識せずにほとんど自然にできてしまうので、これまでのダイビング経験の中でも耳抜きで苦労したことはほとんどないのでした。こんな偉そうな講釈をブってますが正直耳が抜けないということ自体がイマイチ実感がないのです。ごめんなさい m(_ _)m

 

バルサルバ法

 

ダイバーが主に使っているのはこの方法、鼻をつまんで鼻をかむ要領で鼻に空気を送り込みますが、鼻はブロックされているので行き場を失った空気が耳管をこじ開けて中耳に空気を送り込むというものです。ただしこの方法は脳圧を上げてしまう恐れがあるのでできれば避けたいところではあるのですが、実際はこの方法で耳抜きをおこなっているダイバーがほとんどでしょう。

 

 

フレンツェル法

 

最も理想的で安全な耳抜きの方法と言われるのがこのフレンツェル法で、バルサルバ法だと水深15mあたりより深くなるとあまり効果的に行えなくなります。中、上級のフリーダイバーでは30m以上を目指しますので、フレンツェル法が必須になってくるのです。やり方としては鼻をつまんだまま、「んぁ」と発音する気持ちで舌の奥を「口蓋垂(こうがいすい、いわゆる「のどちんこ」の前あたりに押しつけるようにします。こうすることで空気の漏れ出る出口を全てブロックされ、結果的に耳管が開いて中耳に空気が流れ込みます。スクーバダイバーでも耳抜きをもっと安全かつ効率よくできるようにしたいと思っている方はぜひチャレンジしてみてください。最初は舌根部分を喉の奥に押しつける動作を繰り返し練習することです。ご来店の際に聞いていただければ練習の方法を伝授します。

 

耳抜きのタイミングとコツ

 

潜水前にはガムを噛んだり、飴玉を口に入れること

 

先にも言及しましたが、飛行機の着陸時には必ずキャビンアテンダントが飴玉を配ります。あれは、まさに着陸時の圧平衡を緩和するための予備措置なのです。ダイビング前のボート乗船時などに飴玉を舐めたり、特にガムを噛むことで、顔面、特に口周りの筋肉が緩和し、耳抜きがしやすくなりますのでぜひ一度お試しください。

ロープ潜降励行のススメ

 

いずれの方法を取るにしても、とにかく早め早めの耳抜きを心がけることです。潜降スピードを厳密にコントロールできることが必要不可欠なのでビギナーダイバーや自ら耳抜きが苦手を自認するダイバーは必ずロープ潜降を心がけてください。

 

「与圧」のススメ

 

フリーダイビングでは潜水前に水面で必ず耳抜きを一回行ってから潜水を開始します。これを与圧と言いますが、スクーバでも推奨されるテクニックです。まず潜る前に一度耳抜きをして中耳の圧力をやや高めにした状態から潜っていくわけです。

圧力に呼応した体内空間の体積変化率は水深が浅ければ浅いほど高くなります。従って浅ければ浅いほど頻繁に耳抜きが必要になるのです。その微妙な一番浅い段階で、水面で与圧を行っておくことはその後の耳抜きをスムーズに行えるようにするための礎となるでしょう。

ちなみにフリーダイビングではダックダイブ(ジャックナイフ)で潜り始めるケースが圧倒的に多く、その際にアームストロークというテクニックが付随しますので、アームストローク終了まで手を使うことができません。その時点ですでに水深50cm以上には達してますから、与圧が必須のテクニックとなっているのです。

 

耳抜きは鼓膜に微妙な圧迫を感じた時点で!

 

鼓膜に微妙な圧迫を感じた時点でそれ以上の潜降を停止して耳抜きを行うようにしましょう。具体的な感覚としては飛行機で着陸にあたって飛行機が降下を始めた時に感じる程度の耳の圧迫感です。耳が痛くなるようならすでに耳抜きのタイミングを明らかに逸していますので、一度耳に圧迫を全く感じない水深まで戻ってからやり直してください。ロープ潜降ならば水深のコントロールは楽にできるはずです。

前述した通り、浅ければ浅いほど頻繁に耳抜きが必要になってきます。逆に言えばある程度の水深まで達すれば、あとは水深の大きな変化がない限り、耳抜きを気にすることなくダイビングを楽しむことができるのです。

 

風邪気味や体調が悪い時には思いきってダイビングを諦めましょう!

 

これが一番大事!いつもはスムーズに抜けるのにどんなに頑張っても抜けない!というときは素直にダイビングを中止すべきです。一緒に潜っている他のダイバーさんの足を引っ張ることにもなりますし、何より、そんな状態で無理して潜ると、いわるリバースブロック、浮上時に周囲圧より高くなっていく中耳の空気が排出されず、鼓膜が中耳内の圧力上昇で外側に押されてしまうというケースが起こりうる可能性があります。こうなるととにかくゆっくりと耳抜きを行いながら浮上するしかないのですが、とにかく浮上時ですからタンクの残圧も残り少なくなってきます。予備のタンクがあれば予備タンクにチェンジしてとにかくゆっくり浮上するしかないのですが、最悪のケースでは鼓膜が外に破れるリスクを承知の上で、もっと最悪の事態を避けるために鼓膜を犠牲にするという選択をせざるを得ないケースもないとは言えません。

ただ中耳の過膨張による鼓膜の損傷は、外側からのダメージに比べれば比較的軽度です。中から外なので海水などが中耳に侵入する可能性が低いからです。逆に耳抜き不良のまま無理して潜降して鼓膜を損傷した場合には中耳内に間違いなく海水が入り込みますので高い確率で中耳炎を発症し、しばらくはダイビングはドクターストップとなるでしょう。

ちなみに自分は耳に関しては苦労したことは一切ないのですが、もともと幼少期からアレルギー性鼻炎持ちで、沖縄に移住してきてからはほとんど発症することは無くなりましたが、やはり黄砂などの時期には副鼻腔だけが抜けないというトラブルはたまにあります。まだ20代だった頃のお話。座間味から本島で営業を始めた当初、那覇からボートダイビングで慶良間方面を潜り帰ってきた最後のダイビングで浮上中に副鼻腔のリバースブロックになってしまい、中耳であれば鼓膜を破れば済むのですが、副鼻腔の場合は頭蓋骨内にある空間なので、「壊れる」組織がないため、ひたすらもう痛みに耐えるしかないのでした。水深3m程度から痛みを感じ始めましたので、おそらく副鼻腔内の空気は1.3気圧程度。もう眉間を万力で締め付けられているような激痛です。それでも頑張って片付けを終えて、激痛を堪えながらタンクチャージのために北谷の充填所に向かい、到着する直前に「プシュー」っと音がして副鼻腔の加圧空気が出ていきました。あの時の開放感は、今でも強烈かつ最高のエクスタシーだったかもしれません(笑)

 

 

とにかく「無理はしないこと!!」

 

ま、これにつきますね。プロフェッショナルの我々は多少無理して潜ることもありますが、皆さんは仕事ではなく、あくまでもダイビングを楽しみに来てるのですから不必要なリスクは回避しましょう!体調が悪い時には潜らないことです。

 

それでもダメなら耳鼻科に相談しよう!

 

それでもダメなら流石に医学的な問題があると判断せざるを得ません。一番ありがちなケースは耳管に老廃物が蓄積して詰まり気味になっているケース。アレルギー性鼻炎や蓄膿症などの耳鼻疾患をお持ちの方、おまいう!ですが、毎晩飲酒されている方にはこのパターンが多いです。一度耳鼻咽喉科を受診してください。耳管を掃除する治療があります。

 

この記事を書いた人

案納昭則

潜水歴四十年、総本数12000本を超える現役のSSI(スクーバ・スクール・インターナショナル)インストラクターでありJPS所属の職業写真家。
2003年にNHK「趣味悠々〜水中散歩を楽しもう(全7回)」講師を担当。上智大学外国語学部フランス語学科中退。
NPO法人沖縄県ダイビング安全対策協議会事務局長を歴任。

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