ヴィアマーレ

ナイトロックスで潜ろう!

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ナイトロックス(エンリッチ)って何?

私たちがいつも呼吸している空気が主に酸素と窒素でできていることはご存知かと思います。英語で窒素はNitrogen(ナイトロジェン)で酸素はOxygen(オキシジェン)、ナイトロックス(NITROX)はNitrogenの「Nitro」とOxygenの「Ox」を繋ぎ合わせて作った造語で、窒素と酸素の混合ガスのことです。ということは私たちが呼吸している空気も窒素と酸素の混合気なので、空気もナイトロックスです。

ちなみに空気(AIR)中のそれぞれの気体の比率は窒素が79%と酸素が21%。厳密にいうと窒素79%のうち1%弱は二酸化炭素やアルゴンなどの微量気体です。

ナイトロックスという言葉がレジャーダイビングで普及し始めたのは自分の記憶が正しければ、1990年前後、DEMA Show という世界一のダイビング関連産業のトレードショーがアメリカの各都市持ち回りで開催されてますが、その頃のDEMAショーからナイトロックス関連の出店が目立ち始めるようになりました。主に普通の空気よりも酸素濃度の高い空気「エンリッチド・エア」を製造するコンプレッサーのメーカーの出店です。そう、それまでは空気とは配合の違う混合空気といえば純酸素と純窒素をブレンドするという方法しかなかったので非常に高価でしたが、普通の空気から窒素だけを抜き出して結果的に酸素濃度を高くするという技術ができたことで一気にレジャーダイビングに普及していくことになります。こうして圧縮された酸素濃度の高い混合気体がエンリッチド・エア・ナイトロックス(EANx)。長いので略してナイトロックスまたは自分は主にエンリッチと呼んでいるわけです。ちなみにEANxのxは酸素の濃度を表します。

エンリッチは欧米では急速に普及しました。安価になったとはいえ当初は普通の空気に比べればかなり高価でしたが、自分の安全や健康に敏感な欧米人は多少高くても自分の体のためにエンリッチを競って使うようになりました。その結果、わずか30年足らずで、今や海外のリゾートではエンリッチを用意していなければダイバーは来ません。普通の空気もエンリッチも今や価格の差はありません。そこまで普及しているのです。

一方、日本ではどうでしょうか?日本人は高い民度と世界最古の伝統と温和な国民性で世界に誇れるお国柄ではありますが、ここでは日本人の国民性の悪い部分が露呈したようです。ついつい周囲に合わせてしまう。みんなスクーバのままだからわざわざ高いエンリッチなんて必要ない。自分の安全まで人任せで自分で考えることをしない。だから日本ではエンリッチが普及していかないのです。これは学生時代から言い続けていることですが、ダイビングというレジャーはどんなに準備していても自然の気まぐれでどんな危険に遭遇するか予測のつかない部分が常にあるからこそ、お金で買える安全は可能な限り買っておくべきだと。

 

なぜエンリッチなのか?

 

エンリッチド・エア・ナイトロックスを使うメリットとデメリット

 

エンリッチド・エア・ナイトロックスを使う価値は計り知れないものがあります。しかしデメリットもあるのでスペシャリティーコースを受講して正しい知識を習得することが必須となります。

 

 

潜水時間を長くすることができる。

エンリッチド・エア・ナイトロックスでは空気より窒素の比率が少ないため、減圧症のリスクは低くなります。逆にいえば同じ水深でのダイビングで比較すると空気を使ったダイビングより無限圧限界時間は長くなります。また残留窒素量が少なくなるので水面休息時間も短くでき、反復潜水での潜水時間も長く取れます。

 

安全性を高く保つことができる。

ナイトロックスでのダイビングでは、空気で同じ水深に潜ることと比べると身体が窒素に曝露される全体量が少なくなります。したがって、ナイトロックスで潜水するのですが、普通の空気用テーブルや普通の空気設定のコンピュータを使用してその指示に従って水深と時間の限界を守れば、減圧症のリスクを劇的に小さくすることができます。ただその場合には、無減圧時間が長いという長所と、水面休息時間を短くし反復潜水を長くできるという長所は放棄することになります。

 

潜水後の疲労を軽減できる。

まずは窒素の比率が少ないので必然的に水中では窒素酔いのリスクも低くなります。また窒素は人体にとってはある意味、疲労物質だと思っています(あくまでも持論です)ので、窒素曝露が少ないということは潜水後の疲労度も軽減できます。さらに酸素濃度が高いということは相乗効果で潜水後の疲労軽減につながると思われます。が、この根拠を証明する医学的根拠はありません。とはいえUSS.エモンズなど大深度ダイビングでは水深5mに吊るした純酸素シリンダーから急速減圧したりするのですが、普通の空気だけで潜ると帰りの運転が眠くて眠くて危険を感じるほどなのですが、純酸素減圧した後は全く運転中眠くならないのでその効果は疑いようはないと思ってます。

 

エンリッチの限界。

エンリッチを使うと空気よりも深いところへ行けると誤解しているダイバーは少なくありません。実際エンリッチが日本に入ってきた当初はその誤解が原因で重大事故が何件も起こってます。その初期のダイバーの無知蒙昧がエンリッチの普及を妨げている一因なのかもしれません。エンリッチでダイビングするならまずはエンリッチド・エア・ナイトロックスのスペシャリティーコースを受講して正しい知識を学んでからにしましょう。

エンリッチの限界は酸素濃度の高さに起因します。エントリーレベルの講習で「酸素中毒」について学んだと思います。酸素は人体はもちろん、動物の生命維持には必要不可欠なガスですが高圧すぎる酸素は逆に猛毒となりえます。

それではどの程度の酸素なら大丈夫なのでしょうか?この基準には酸素の分圧というのを使います。通常の空気は21%の酸素が含まれますので水面一気圧上で酸素の分圧は0.21気圧です。人体に安全とされる酸素の分圧は平時で1.4気圧。緊急時のみ1.6気圧まで許容できます。仮に純酸素を使ってダイビングするとわずか6mで安全限界に達します。ちなみに空気で潜って1.6の酸素分圧に達するのはおよそ水深65mですので通常のレジャーダイビングではあり得ない数字です。

しかし、通常より酸素濃度の高いエンリッチでのダイビングでは通常のレジャーダイビングの範囲内で酸素の安全限界を超えてしまうかもしれません。例えばEAN32では33m程度で酸素分圧1.4。通常はこの水深を超えてはなりません。やむを得ない場合でも40mで酸素分圧が1.6気圧。これが絶対的限界です。個人差はありますがこの水深を超えると命に関わるリスクを高い確率で負うことになります。

もっと酸素濃度の高いEAN36だと約28mで安全限界1.4気圧に達します。

エンリッチは決してディープダイビングのためではなく、レジャーで推奨される水深の範囲内でより長く、かつ安全に潜るためのガスなのです。

 

エンリッチをどう使うか?

 

全てのダイビングをエンリッチにする必要はない。

 

もちろん全てのダイビングをエンリッチにした方がいいに決まってますが、日本ではまだまだエンリッチは空気に比べるとやや高価です。もっと欧米並みに普及してくれば日本でも空気もエンリッチも同じ価格という時代が来るとは思いますが、残念ながらダイバー一人一人の意識が根本的に変わらない限り日本ではかなり先の話になるでしょう。でも当店はもう少し頑張れば統一料金にできそうなところです。

というわけでせめて1日3本潜るなら2本目と3本目、せめて最後の1本だけもエンリッチにしてみましょう。それだけでも体への負担は劇的に軽減できるはずです。ただしこの場合はエンリッチでもあえて普通の空気のテーブル、または空気設定のダイビングコンピュータで潜ります。

 

エンリッチを使用する際のお決まり。

 

エンリッチを使用する際には必ず自分の使用するシリンダー内のガスの酸素濃度を正確に測定します。沖縄で最も入手しやすいエンリッチはEAN32です。これは酸素が32%のエンリッチド・エア・ナイトロックスが充填されているシリンダーという意味。でもどれもピッタリ32%充填されているとは限りません。むしろ32%ピッタリ入っていたら奇跡と言っていいぐらいです。なので使用するたびにシリンダーないのガスの酸素濃度をアナライザーという測定機で都度測定します。測定の実技は講習で学びます。

 

 

エンリッチド・エア・ナイトロックスSPコースを受講しよう!

 

 

エンリッチド・エアー・ナイトロックスSPにはEAN32とEAN40の2種類がありますが、学科内容は同一です。まずはe-LearningとZOOM座学でオンライン最終テストを完了すればEAN32の認定が受けられ、EAN32までのエンリッチのシリンダーを使ったダイビングが可能になります。その後当店に潜りに来られたときにでもダイビング前にアナライザーを使ったガスの酸素濃度測定の実技を完了すればEAN40の認定を受けることができ、EAN40までのエンリッチ・シリンダーを使ったダイビングが可能となります。ちなみにマレス・ホライゾン・コースにはこのEAN40認定が必要です。

 

 

この記事を書いた人

案納昭則

潜水歴四十年、総本数12000本を超える現役のSSI(スクーバ・スクール・インターナショナル)インストラクターでありJPS所属の職業写真家。
2003年にNHK「趣味悠々〜水中散歩を楽しもう(全7回)」講師を担当。上智大学外国語学部フランス語学科中退。
NPO法人沖縄県ダイビング安全対策協議会事務局長を歴任。

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